私の一冊<第4回> 安部 白道
<お薦めの一冊、思い出の一冊>
幸福論
著者/アラン
<紹介者>
一般社団法人 未来かなえ機構 事務局長 安部 白道
<コメント>
「ひとりで孤島に暮らすとしたら持参する書籍は何か?」という問いに、キリスト教徒ならば、大半は『聖書』と答えるそうだ。宗教心の欠落した私にとってはさしづめ『幸福論』が”こころのバイブル”であろうか。
私がこの書を知ったのは、介護関係の教授が引用したフレーズであった。
「悲観主義は気分によるものであり、楽観主義は意志によるものである」
以来、座右の書となった。わったような自分がそこにいた・・
2011年3月17日、深刻化する原発事故の恐怖から、私は家族の疎開を決断した。生まれて初めて味わった死の恐怖。
「万放射能で汚染されたら、もう我が家に戻ることはないかもしれない」
そんな想いを胸に、慌しい疎開準備の中、書棚からただ1冊抜き取ったのが『幸福論』であった。九州へ向かう機中で人心地ついた私は、一時的に恐怖から逃れた解放感に浸りながらおもむろにこの文庫本を取り出し、なにげなくページを開いた。目に飛び込んできたのが「事故」という表題。
そしてこの一行。「恐怖を作り出すのは想像力のしわざなのだ」!
心に衝撃が走った。”私は、何を恐れているのだろう?今自分がなすべきは自分や家族の命を守ることだけであっていいのか”空港に降り立ったとき、こころは不思議なほど澄みきって、生まれ変わったような自分がそこにいた・・
『幸福論』は、私の死生観と行動を変えたのである。
幸福論 (岩波文庫)
蔵書:無